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August 2020

August 09, 2020

知財はスタートアップの必須ツール

知財スタートアップ必須ツールと謳っているのは、特許庁が立ち上げた「STARTUPs×知財戦略」のための”基地”、IP BASE。https://ipbase.go.jp/

この種の事業が開始されたのは、2002年(平成14年)11月~15年2月に開始された東京大学先端科学技術研究センターによる「知財人材育成オープンスクール」だろうか。この当時、弁理士会では特定侵害訴訟代理業務試験が開始され、それに合格すると、知財訴訟の代理人すなわち、いわゆる付記弁理士として活動できるとする制度が開始された。当時、訴訟の補佐人も経験していた私も、当然、特定侵害訴訟代理業務試験を受けることとなったが、同時に、「知財人材育成オープンスクール」にも応募することとした。定員の10倍の応募があったそうだが、運良く参加することができた。https://www.rcast.u-tokyo.ac.jp/content/000003919.pdf

世の中の知財界が、これからは訴訟だ・・というとき、これからは知財経営だ・・ということで、そちらに梶を切ったのである。

そのスクールに、当時の弁理士会会長が授業参観に来られた。「弁理士は企業が必要とする知財業務のほんの一部しか担当していませんよ」と申し上げたときの驚いた顔は今でも忘れられない。その後弁理士会では、弁理士のウイングを広げようとの施作を開始し、秋葉原のダイビルにアキバウイングというオフィスを作り、IPBAを開始した。また、知財コンサルティング検討委員会を作り、初代委員長に小職が任命された。

特許庁でも、平成16年度から平成22年度にかけて地域中小企業知的財産戦略支援事業が行われ、知財経営の支援が開始され、その流れで、現在のIP BASEに至っている。IP BASEにて、「創業期には、ビジネスの立ち上げに注力するあまり、知財戦略のノウハウや知財取得にかけるリソースが不足し、コアとなる技術やアイデアが十分に保護されていない」と指摘されているが、まさしくその通りである。知財立国といわれてから何年たつだろうか。まだまだである。

今後の推進を期待したいところである。

 

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August 01, 2020

新たな人生へ向けて

去る7月29日に65歳の誕生日を迎え、7月末を以って秀和特許事務所の経営から退き、人生の再出発を致しました。
29歳という年齢で特許事務所を立ち上げて以来、36年。あっという間でした。事務所開設当初、特許事務所のあるべき姿として欧米の特許事務所に倣いパートナー制を取り入れました。
当時、大手の特許事務所をみると、一人のオーナー弁理士が、多数の特許技術者を雇って代理業務をしているところや、パートナーと称される弁理士はいるものの、事実上は単なる雇用された弁理士にすぎない事務所がほとんどで、真のパートナー制を採用する事務所は極めて少ない状態でした。

また、特許事務は一つの案件が長期にわたり、高齢化してからの代理は顧客への安定したサービス提供ができなくなる可能性があります。特に、私の開業当時、出願審査請求は出願日から7年までの間に請求すれば良い状態でした。そして、多くの企業は7年経過間際まで審査請求を待つことが多い状態でした。65歳で受任するなら72歳で出願審査請求となります。そのような状態で代理していて本当に良いのだろうか。個人的な信用では長期の信頼に応えることができないこと。これらの理由から、高齢化してからの代理はせず、個人的信用ではなく組織としての信用を確立し、サービス提供の永続性を確保なければいけない。そんな思いが当初よりありました。

さらに、とあるクライアントの知財部員の方がもらした言葉がありました。当時、80名弱の大手の事務所の所長先生を指して、こう言っていました。「あの先生がお亡くなりになったら、あの事務所どうなるのでしょうね。」と。その先生は有名なカリスマ的存在の先生でした。その事務所には優秀な弁理士が働いていたにも関わらずの評価です。そこで気づきが生まれます。「一人のカリスマ的信用に頼った事務所では永続性を担保できない。」

さらに、弁理士業の構造的問題もありました。今でこそ特許業務法人が認められるようになりましたが、当時特許事務所は、弁理士の個人経営とせざるを得ない状態でした。よって、オーナー型の特許事務所では、所長が亡くなったとき、すべての資産はその遺族が引き継ぐことになります。ご子息が弁理士であればまだ良いですが、そうでない場合、事務所の運営に必要な資産が弁理士でない遺族に引き継がれてしまい事務所の継続は非常に危ぶまれます。また、ご子息が弁理士で引き継いだとしても、先代からの経験豊富な従業員から支持されず、混乱が起きて衰退する事務所も多々見受けられました。

このような状態は避けなければならないですね。元来、一人の弁理士ですべての技術分野の発明の出願代理などできるわけがありません。そこで、事務所として抽象化名称を冠としてパートナー制を本格的に導入し、世代交代を安全にできることを目指し、経営パートナー陣の協議により定年退職制も導入し、経営パートナーは自ら退いていくこととしました。創業時は不可能であった特許事務所の法人化もすることができ、さらに、幸いにして、優れた後進の弁理士仲間に恵まれ、安心して事務所経営からリタイアすることができました。

思えば、創業当時、弁理士という資格はあるものの29歳という若造によく目をかけていただけたものだと、感謝しかありません。お客様に様々な案件をいただき、出願から訴訟に至る特許実務のほぼ全てを経験でき、有意義な弁理士生活を送ることができました。すべてが順風満帆というわけではありませんでしたが、その全てに意味があったと思う次第です。感謝、感謝、感謝につきます。ありがとうございます。

事務所経営からは退きましたが知財の仕事を辞めるわけではありません。今後は、一弁理士に戻り、知財経営、知財戦略の研究やアドバイス、成蹊大学での知財法の教授などを行うこと、さらに、写真の分野での活動=写真で元気プロジェクト、それらを通じて社会問題を解決するための活動ができればいいなと思っております。皆さまには今後ともよろしくお願い致します。

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